デザインのアウトプット品質を高めるため、1日1枚を基本に世の中のグラフィックデザインを観察し、良いと感じたポイントをノートに書き出すことを続けていました。ノートが70枚になっていたので、共通点をまとめてみます。
ジャンルを絞らずに広くデザインを参考にさせていただいたのですが、良いと感じるポイントには共通点があるように感じました。
※主にチラシ、フライヤー、ポスターなどのデザインを対象としています。
結論
自身の好みの方向性に影響された判断になると思いますが、以下の点が共通項のように感じました。
基礎
- 効果的な対比(コントラスト)による明快な情報のメリハリ。
- 情報の優先度が明快にわかる。
- 世界観として成立している。
- 例:色使いやフォントのトーンが、ターゲットや目的と一貫している。
応用・個別の具体的手法
- 要素の重なり(重ね方)が上手い。
- 奥行きを感じる(ドロップシャドウなしで)。
- 要素のはみ出し方が上手い。
- 視線の動きや流れが意図的につくられている。
- 特にS字の視線の動きが作れているとより動きのある印象に感じる。
- 動き、躍動感、ダイナミック感がある。
- 領域(ゾーニング)のつなぎ方が上手い。
※応用の項目は、いくつかを取捨選択して使うのが効果的だと思います。
やってみたこと
- Pinterestで「チラシ」「フライヤー」「デザイン」などのキーワードで検索をする。
- 気になったデザインをGoodNotesで開く。
- 情報の優先度を「高・中・低」の3段階に分けて、どのような情報の塊になっているかを見る。
- デザインの中で良いと思ったことや意外に思ったことなどを書き込んでいく。広告の依頼者やデザイナーの意図を予想しながら見るのもありかもしれない。
- 後から振り返り、共通点を探す。
- チームメンバーに共通点を共有。
- ブログ記事の公開。
GoodNotesの画面キャプチャ。実際のデザインにはモザイクをかけています
GoodNotesの画面キャプチャをいくつか抜粋。1枚のデザインに対してノート3ページ以内を目安に情報を書き込んでいきます
どのように応用するか?
自身のデザインを見直したときに「何かバランスがイマイチ」「工夫が足りない気がする」「情報の優劣が弱い」「動きがなくて単調・つまらない」など、何かしらの課題がありつつもそれが明確になっていないときに、上記の結論をチェックリスト的に使えるかと思いました。
必ずしも「結論の要素が入っていなければならない」ということはありませんが、デザインをもうひと工夫するためのヒントになればと思います。
結論の深堀り
結論では端的に箇条書きしたのですが、各項目についてもう少し深堀りしてみます。以下はGeminiに情報を整理・補足してもらった内容です。感覚的なキーワードを元に、Geminiが体系立てて言語化してくれました。
1. 視覚的な階層(Visual Hierarchy)
「何が重要か」を瞬時に理解できる(情報の論理的整理)
「コントラスト」「優先順位」「強弱」を、「手段」と「効果」の関係で整理しました。
- 優先順位の確立
- 手段:情報の優先度を分類する(優先度:高・中・低)。
- 効果
- 情報の優先度が明確になる。
- 情報が理解しやすくなる。
- 読み方・見方がわかりやすくなる。
- 対比(コントラスト)による強調
- 手段:サイズの大小、書体のウェイト(太さ)、色の濃度。
- 効果:曖昧な類似性を減らし、メリハリをつけることで情報の衝突を防ぐ。
2. 空間構成(Spatial Composition)
平面の中に物理的な世界観をつくる(空間の物理的演出)
「重なり」や「はみ出し」は、2次元の平面に3次元的な奥行きを与えます。
- 重なり・擬似的な奥行き
- 手段:要素の前後の重なりで奥行きを表現する。
- 効果
- 要素の優先順位付けの補足になる。
- 情報密度に差を出すことでメリハリをつけられる。
- 奥行きによる動き・空間の広がり感を演出できる。
- はみ出し・フレームの拡張
- 手段:要素をあえて画面外に見切れさせる。
- 効果
- フレームの外側に広がる空間の想像を促す。
- デザインに広がりや開放感が生まれる。
- 要素のサイズや文字のウェイトとは違った強調のしかた、動きの付け方ができる。
3. 視線誘導と動き(Flow & Dynamics)
視線の動きと時間の流れを操る(時間の演出)
「動き」「S字」「領域(ゾーニング)のつなぎ」は、静止画の中でユーザーの目がどう動くか(=時間軸)を設計する項目です。
- S字曲線の流れ・視線の設計
- 手段:S字の曲線の流れでレイアウトする。
- 効果:直線的なZ型・F型よりも、有機的で滞在時間の長い視線誘導をつくる。
- 領域のつなげ方
- 手段:異なるゾーニング(情報の塊)同士を分断せず、視線が滑らかに移動できるようにつなぐ。
- 効果
- 要素同士の一体感が生まれる。
- まとまりとしての自然さを持たせられる。
- スムーズな視線移動を促し、情報が理解しやすくなる。
- コントラポスト(不均衡の均衡)
- 手段:重心や軸をあえて傾けたりずらしたりする。
- 効果
- 静止画に「次の瞬間の動き」を予感させる(躍動感につながる)。
- より自然な視線誘導を促す。
- 全体の調和につながる(場合もある)。
補足:コントラポスト(対置)とは?
「対置」を意味する美術用語。片足に重心を預けることで肩と腰の傾きが逆になり、体に美しいS字曲線が生まれるポーズのことです。この「非対称のバランス」をデザインに応用することで、静止画の中に自然な視線の流れを作り出し、次の動きを予感させる躍動感を演出できます。
Gemini
「コントラポスト」とは、腰と脚が肩と頭とは違う方向に曲がり、全身が縦軸上でよじれている姿勢を表す用語だ。体やポーズが、ヘビのように曲がりくねったS字を描いている。
スカルプターのための美術解剖学
スカルプターのための美術解剖学
「コントラポスト(Contrapposto)」という言葉は、人体の骨格やポージングについての動画を見たり『スカルプターのための美術解剖学』を読んだりしたことがきっかけで知りました。
デザイン文脈で使われることは少ないかもしれませんが、レイアウトにおける「S字の視線誘導を意識する」ということに近いのではと思います。
なぜコントラポストの曲線的な流れが、平面デザインのレイアウトに活かせると考えるのか?
仮説ですが、「重力に対する人間や動物の自然な立ち振る舞い」の曲線的な流れが、平面構成における有機的で自然な視線誘導にもつながり、結果的に人間の視覚にとって「心地良く自然な流れに感じる」のではないかと考えています。
まとめ:デザインの「違和感」を解消する道具として
70枚のノートを通じて見えてきたのは、優れたデザインには「明確な意図を軸とした論理」が潜んでいるということでした。
今回挙げた共通点は単なる装飾のルールではなく、情報の伝わりやすさを支える「骨組み」です。もし制作物に対して「何か足りない」と感じたときは、この共通点をチェックリストとして活用いただけると嬉しく思います。
- メリハリは十分か?(視覚的階層)
- 重なりやはみ出し(見切れ)で空間を演出できているか?(空間構成)
- 視線は自然に流れているか?(視線誘導・コントラポスト)
観察を続けることで、最初は「何となく良い」と感じていたものが、徐々に「なぜ良いのか」という仕組みや法則のようなものが少しずつ見えてきたようにも感じます。この記事がデザインをもう一歩先へ進めるためのヒントになれば幸いです。