どんな本か？

進化とはどういうことなのかについて学べる本です。人間によってデザインされたものと動植物によってデザインされたように見えるもの（この本ではデザイノイド物体と表現されている）の違いと特徴から、進化の過程を知ることができます。それぞれの生物の視点やメリットに立った考え方が面白いと思いました。

読む目的

• 好奇心として、進化について知りたい。
• 進化の過程からデザインに応用できそうな共通点を知りたい。

読む前に期待していたこと

• 進化について概要を知る。
• デザインに活かせる視点や工夫について知る。
• 進化の過程から倫理や哲学についても学べるかもしれない。

感想・重要だと感じたこと

デザインされたものとデザインされたように見えるもの（デザイノイド物体）の違い

• 人間が何らかの目的を持ってデザインしたものと、人間以外の動物や植物の構造上デザインされたように見えるもの（デザイノイド物体）との違いが面白かった。
• 人間がデザインするものは意識的に先を読んでおり、単なる偶然でできあがるものではない。動植物は過去の失敗から自然選択によって形状が定まってきた。未来を起点にしていることと、過去を起点にしていることの対比がわかりやすい。
• 生物の構造を知ることで、科学に応用するヒントになっているように感じた。さらに科学からビジネスへの応用を経て、生活への浸透につながっていくのかと思う。

 収斂進化（しゅうれんしんか / Convergence）

• 「同じような目的や役割を持ったものは似た形状になる」という考え方が印象的。
• ユーザーインターフェイス設計の考え方にも似ていると感じた。
• 例えば役割によって最適化された形状や構造が選ばれ、プラットフォームが変わっても同様のユーザーインターフェイスとしての見た目や振る舞いのほうがユーザーが使いやすいはず。そして使いやすいユーザーインターフェイスが長く生き残りやすい。

それぞれの生物の視点やメリットを考える

• それぞれの生物の視点で長期的な種として生存戦略について書かれているので、生物ごとの視点を知ることができて面白かった。花は自身が移動できない代わりにハチに花粉を運んでもらうことで、「疑似的に羽を得ており、植物の遺伝子を運ぶ飛行器官と見なせる」とのこと。
• 「ハチが花に止まり花粉を運ぶ」ことの双方のメリットについて。花のメリットやハチのメリットから考えると、合理的だったり最適化されているものが実はたくさんありそうで面白い。
• マーケットとも共通点が多そう。

特に印象的だと感じたところの引用

科学は、役に立つから教えるというより、美しいから、感動するから教えるというふうであってほしい。その美しさを十分に認識するためには、辛抱強く努力する必要があります。

Clinton Richard Dawkins『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』

この部分が特に印象的でした。

今後に活かしたいこと

• いろんな視点やメリットについてものごとを見てみると発見がありそう。焦点距離を変えることでも見えてくる景色も違ってくるはず。すごく近づいて見てみたり、離れて大きな流れとして見てみたり。
• 地道に辛抱強く努力することが大事。
• 収斂進化の概念について。生物の進化現象だと知ったので、ユーザーインターフェイス設計で根拠を明確にするための材料として活用できるかもしれない。

関連用語メモ

自然選択（Natural Selection）

自然は常にどの個体が生き残っていくかを選択している。状況に適応して有利な形質を持つものが生き残る。

DNA（Deoxyribonucleic Acid）

デオキシリボ核酸の略称。2重らせん構造で生物の遺伝情報の継承と発現をおこなう化学物質。世代を下って流れる川のようなものであり、時折突然変異が起きる。突然変異によってバリエーションが生まれ、自然選択の余地が出てくる。

ナノテクノロジー（Nanotechnology）

つくっている本人よりも10億分の1の大きさのものをつくる技術のこと。応用することで細胞レベルの大きさの手術器具の活用が期待されている。

収斂進化（しゅうれんしんか / Convergence）

同じような目的や役割を持ったものは似た形状になるという考え方。

参考文献

『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』

Wikipedia